「透析を受けているけれど、旅行はできるのだろうか?」
「旅行先ではどうやって透析を受ければいいのか」。
血液透析を受けている場合でも、旅行先の受入候補施設を事前に探し、普段通院している透析施設と必要な情報を共有する流れが公開資料で案内されています。
一般社団法人全国腎臓病協議会(全腎協)は、1971年に結成された腎臓病患者の患者会組織です。腎臓病患者の医療と生活の向上を目的に、政策提言や療養生活に関する啓発活動などを行っています。
「透析患者を中心とする腎臓病患者の組織」
— 一般社団法人全国腎臓病協議会「全腎協について」
全腎協は、透析治療を受けていても旅行は可能と案内しています。そのうえで、旅行中も透析日を守ること、食事や水分管理に注意すること、無理のない計画を立て、まず普段のかかりつけ医に相談することを勧めています。
この記事では、次の公開資料をもとに、国内で旅行透析を相談する際の基本的な流れと準備を整理します。
- 厚生労働省ウェブサイトで公開されている「腎臓機能障害者(血液透析患者)が全国障害者スポーツ大会に出場するための旅行の手引き」
- 全国腎臓病協議会「旅行について」
- 厚生労働省・山梨県による現在の案内
厚生労働省掲載の手引きは2009年度に作成された資料です。旅行透析の基本的な流れを知るうえでは具体的ですが、保険制度や書類の運用など現在と異なる部分があります。本記事では2026年9月現在の厚生労働省等の案内で補いながら紹介します。
旅行透析とは
旅行透析とは、普段通院している透析施設とは別の医療機関で、旅行や帰省、出張などの間に一時的に透析を受けることです。
すべての透析施設が旅行透析を受け入れているわけではなく、ベッドの状況や診療体制によって希望日に受け入れられないこともあります。
たとえば山梨県では、県が旅行透析を受け入れている医療機関を一覧で公開しており、事前予約が必要であること、普段の透析施設から診療情報提供書や透析条件などの情報提供が必要になることを案内しています。
そのため、旅行の日程が決まったら早めに受入候補施設を探すことが大切です。
旅行透析の基本的な流れ
全腎協は国内旅行の流れを、旅行先と日程の決定、透析日時の決定、旅行先の透析施設探し、依頼、紹介状や透析条件・検査データ等の送付という順序で紹介しています。
1. 旅行の日程を決める
まず、普段の透析曜日と旅行の日程を照らし合わせます。旅行期間中に透析日が入る場合は、観光や移動だけでなく、透析に必要な時間も含めて旅程を組みます。
旅行計画を立てる際は、あらかじめ普段の透析施設やかかりつけ医へ相談してください。
2. 旅行先で透析を受けられる施設を探す
次に、旅行先で旅行透析・臨時透析を受け入れている施設を探します。
全腎協は、インターネットで「旅行透析」「臨時透析」「観光透析」などの言葉で検索するほか、普段通院している透析施設や地域の腎友会へ相談する方法を紹介しています。
3. 受入候補施設へ問い合わせる
希望する日程で透析を受けられるか、旅行先の施設へ確認します。
全腎協は国内旅行について「旅行の1か月ほど前まで」に依頼する流れを紹介しています。ただし、実際の申込期限は施設によって異なります。
確認項目の例は次のとおりです。
- 希望日の受入可否
- 透析を受けられる時間帯
- 必要な診療情報・書類
- 書類を送る期限・方法
- 当日の持参物
- 費用や支払方法
問い合わせが早いほど受入が可能とは限りませんが、透析日時が確定すると旅行全体の計画を立てやすくなります。
4. 普段の透析施設に相談する
旅行透析を受ける施設が決まったら、普段通院している透析施設へ伝えます。旅行先の施設から求められた診療情報提供書や透析条件、検査データなどの準備を依頼します。
5. 必要な医療情報を受入候補施設へ共有する
2009年度の厚生労働省掲載資料では、旅行先での透析に備えて、普段通院している施設から次の書類を準備・共有する流れが示されています。
- 透析内容情報
- 過去1週間の透析経過表
- 過去数か月間の検査成績表
- 診療情報提供書
資料には「透析内容情報」の帳票例もあり、原疾患、透析導入日、ダイアライザー、血流量、抗凝固薬、基礎体重、感染症情報、禁忌薬・アレルギー、バスキュラーアクセスなどの項目がまとめられています。
全腎協の案内でも、主治医に紹介状と透析条件・検査データなどを書いてもらい、旅行先の透析施設へ送る流れが示されています。
実際に必要となる情報、対象期間や書式は施設によって異なります。 古い帳票をそのまま使用せず、申込時に受入候補施設へ必要書類を確認してください。
旅行透析で求められることがある主な情報・書類
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 診療情報提供書 | 現在の病状や治療内容など |
| 透析条件 | 透析時間、ダイアライザー、血流量、抗凝固薬など |
| 最近の透析記録 | 普段の透析経過 |
| 検査データ | 血液検査、感染症関連情報など |
| 保険資格を確認できるもの | マイナ保険証または資格確認書など |
必要な書類、対象となる検査期間、情報の送付方法は施設ごとに異なります。受入候補施設への申込時に必ず確認してください。
6. 旅行先で透析を受ける
施設と確認した日時に受診します。初めて訪れる施設では、いつもの施設と院内の動線や手順が異なる場合もあるため、到着時刻も予約時に確認しておくと安心です。
旅行先での食事や水分についても、主治医や普段の透析施設から受けている指示に従ってください。全腎協も、旅行中でも透析日を守り、食事や水分に注意することを案内しています。
7. 帰宅後、普段の施設で透析を再開する
旅行先で受けた透析の記録などを、普段通院している透析施設へ共有する場合があります。厚生労働省掲載資料でも、旅行先の施設で透析記録や診療情報提供書を作成してもらい、普段の施設へ持ち帰る流れが示されています。具体的な対応は双方の施設の指示に従ってください。
健康保険証については古い情報に注意
厚生労省掲載の2009年度資料や全腎協のページには、健康保険証を持参する記載があります。しかし、2026年9月現在は制度が変わっています。
厚生労働省の案内によると、従来の健康保険証の有効期限は2025年12月1日で終了しています。医療機関では原則として、マイナ保険証を持つ人はマイナ保険証、持たない人は資格確認書を提示します。
マイナ保険証を利用する場合、厚生労働省のFAQでは、特定疾病療養受療証等の持参が不要になると案内されています。一方、自治体独自の医療費助成は対応状況や手続きが異なる場合があります。旅行先での支払方法や帰宅後の還付手続きも含め、加入している医療保険者、居住自治体、受診予定の医療機関へ事前に確認してください。
厚生労働省掲載の「旅行の手引き」とは
主な参考資料の一つが、厚生労働省ウェブサイトで公開されている2009年度の『内部障害者の社会参加 調査研究事業報告書』内の「腎臓機能障害者(血液透析患者)が全国障害者スポーツ大会に出場するための旅行の手引き」です。
全国障害者スポーツ大会への参加を想定した資料ですが、旅行前の準備、普段の透析施設との調整、旅行先への情報提供、現地での透析、帰宅後までが具体的に整理されています。
透析内容情報や透析経過表などの帳票例も掲載されていますが、そのまま現在の申込書式として使うのではなく、施設間で共有する情報の全体像を知る参考資料として読むのが適切です。
全腎協の旅行案内も参考になります
全腎協は、国内旅行と海外旅行について具体的な情報を公開しています。国内旅行については、旅行先の施設探しから依頼、診療情報の送付までが順番に整理されています。
一方で、従来の健康保険証についての記載など、現在の制度と異なる情報も含まれています。旅行透析の基本的な考え方を知る資料として参照し、保険制度や必要書類は最新の公式情報と受入候補施設の案内を確認してください。
旅行透析の経験が災害時に役立つことがある
全腎協は、災害などで普段通院している透析施設が利用できなくなった場合、別の施設で透析を受ける可能性にも触れています。
自分のシャントの場所、ドライウエイト、透析時間、血流量などの透析条件を把握しておくことは、普段と異なる施設で透析を受ける際の情報共有に役立ちます。ただし、旅行透析の経験が災害時の安全を保証するものではありません。
旅行先の透析施設を探す
旅行透析では、旅行日程とともに、どこへ透析を相談するかを早めに決めることが重要です。
透析旅行ナビでは、旅行透析・臨時透析への対応が公開情報で確認できた医療機関について、所在地、アクセス、公開されている受入条件、透析曜日などを整理しています。掲載は受入可能や予約成立を保証するものではありません。
